拾遺


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...... 2007年08月07日 の日記 ......
■ 真実の底   [ NO. 2007080702-1 ]

「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか? ベトナム帰還兵が語る本当の戦争」 アレン・ネルソン著 講談社

読了

 

ベトナム帰還兵アレン・ネルソン氏が語る戦場の真実。

高校中退したアフリカ系アメリカ人の一青年であった氏が、黒人蔑視の風潮の強い当時のアメリカで、勧誘されるまま海兵隊に入隊し、キルマシーンに仕立て上げられる恐怖。

上官にとってよい兵士とは効率のよい殺人者でしかないのであった。

 

命じられるまま、ベトコンを殺し、殺したくないと願いながら、また殺す。

 

虐殺の戦場で荒廃する魂。本国に帰還して家に帰っとき、彼のおかあさんは

「あんたは私のアレンじゃない、出て行って!」と言って、彼の目の前で家のドアを閉めたそうです。

おかあさんは、彼に染み付いた「殺人者」の匂いに本能的な恐怖を覚えたのでしょう。

 

そして23歳、ホームレスでニューヨークのスラムをうろついていた彼に、高校時代のクラスメイトが声を掛けたのがきかっけでした。

ハーレムで小学校教師を勤める元クラスメイト、ダイアンは、彼に教え子達に「講演」を願い出ます。

〜戦争のことを、子供たちに話してほしい〜

 

躊躇した挙句、彼は小さな子供達に戦争の話をしようとこの「講演」依頼を引き受けました。

 

彼は思ったそうです。小さな子供達にありのままの真実を話したら、彼をどんな眼で見るだろう?怯えて逃げ出す子供もいるかもしれない。

そこでキング牧師の写真が飾られたアフリカ系アメリカ人の子供達の居並ぶ教室で

 

「こんな装備をして、こんな行軍をして、こんなご飯を食べるんだよそして戦争は悲しいものであり、そのためにお金が使われている」

という本当ではありますが当たり障りの無い「事実」を子供達に語ったそうです。

彼の講演に拍手が送られ、質問の時間に入りました。

 

そして運命的な質問をされた、と彼は言います

 

「ミスター・ネルソンあなたは人を殺しましたか?」

 

彼は迷ったそうです。が、その果てに、子供達の前ではっきり言ったそうです。

 

「YES」

と。

そのときいつの間にか、彼は泣いていたそうです。

そして彼が本当に驚いたのは子供達が大きな彼を抱くようにして一緒に泣いてくれたのだそうです。

 

子供の同情、だったのかもしれません。

でも私には子供達は彼の中の

「戦場で殺した命」

そして

「もう取り返しのつかない、失われた、いくら泣いてもかえらない なにか」

にシンクロニティを感じて涙を流したように感じられてなりません。

 

彼は「私の中で何かが溶けました」

と語ります。

 

 

このとき

彼がたわいなく「NO」といっていたら

彼が当たり障りの無い事実でお茶を濁していたら

 

彼は永遠に戦場の記憶に苛まれ、PTSD(心的外傷後ストレス症候群)に飲み込まれ、路上で野垂れ死にしていたかもしれません。

 

ジャグリングするように当たり障りの無い話題を巧みに扱いながら人と会話をするのはさまで難しいことではありません。

私も嫌いじゃありません。

 

さりげない真実を語り、想いを伝え合うほうがずっと難しいのです。

 

現在、ネルソン氏はPTSDを克服し高校卒業資格を取り、大学に入学し、反戦を、沖縄での米兵の暴行行為訴えるべく、活動を続けておられるそうです。(FBIにマークされていることでしょう きっと)

 

この本を読んで何より凄いと思ったのは、「訳者」の記載がないこと。

そう、ネルソン氏は日本での講演にあたり、日本語で講演されているようなのです!!

気持ちがあるからこそ伝えられる。しかし気持ちだけでは上手く伝わらないかもしれない。

そのための、言葉。

 

世阿弥の言葉

「こころよりいでて かたちにはいり かたちからいでて こころにはいる」

 

(伝えたい気持ちをもって 演技に臨む しかし 人の心を打つのは演技ではない、その心の中にある気持ち、さりげない真実なのですよ)

を思い出しました・・・

 

活字の大きさ、本の薄さの割りに内容の濃いいい本。

夏の読書感想にオススメ。

良書でした。

 

 

...... 返信 ......
■Re:真実の底   [ NO. 2007080702-2 ]
ベトナム戦争に参戦した多くの人が、心を病んだり、性格の変化を見せたりしたという話は聞いていました。
大体の場合、これはPTSDによるものだったのでしょう。
ネルソン氏が人前で自分の経験を語るのは、容易なことではなかったと思います。
それでも彼の心からの真実の言葉が人々に伝わり、彼自身も癒されたというのは、喜ばしいことです。
残念ながら、彼のような人は少数派で、人生を台無しにされたまま取り残された人々が数多くいます。
さらに今なお世界各地で内戦や民族紛争、はたまたテロとの戦いと称する新しい形の戦争が悲劇を生んでいます。
悲しいことに、私たちはこのような状況に対しては無力で、ただ日々の生活に追われるばかりです。
特に私などは自分のことに手いっぱいで、できることと言えば、文字通り祈ることくらいです。
それでも、平和を願う気持ちは誰にもあるはずですから、希望が全くないとは言えません。
もうすぐ終戦の日です。ベトナム戦争さえ知らない若い世代の心に、戦争の真実を伝える言葉が届いてほしいものです。
(かく言う私も、戦争を知りません。どんなことであれ、真実の言葉に耳をすましたいと思います。)
クリスタル 2007/08/08 03:09:55 

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