「ハリーポッターと死の秘宝 上・下」 静山社 J・K・ローリング著 松岡祐子訳 児童文学の大ベストセラー 途中発行が遅れたり興味が切れかけたりで息切れ気味だったが一巻から読んできたので読む。 未成年である故の護りの魔法が賞味期限切れになり、デルモヴェートとの最後の対決を迫られるハリー。 魔法省はデルモヴェートの手に落ち、これまでも死人が出ていたが今度は自分かデルモヴェートの番だといわれ、起死回生の策を探すべくハリーは旅に出る。 一方で死んだダンブルドアの毀誉褒貶にみちた伝記が出版され、恩師であり導き手であった賢者の半生にあらためて不信を募らせるハリー。 はたしてハリーは生き残ることができるのか。 七巻トータルの印象としてここまできて張りまくった伏線の回収に気をとられているのか、伏線こそきちんと回収されているものの描写の荒が目立つ。 ハリーの逃亡に同道するロン、ハーマイオニーであるが先の見通しのないハリーの行動に業を煮やし、旅の辛さからパーティーをリタイアしてしまうロン。 離反→和解の王道パターンで再合流するものの、さらっと描きすぎ。 子供が大人になる、指導する人も保護してくれる人もいないで自分の信念だけを信じて行動する痛さ辛さ、といった児童文学の中核をなすテーマなのだからもっと入念に描写してもいいのでは。 この部分、枚数こそ割いているものの描写が薄っぺら。 魔法界のマグル蔑視、屋敷しもべ妖精差別などせっかく六巻目まで提示してきたテーマを適当に収拾をつけてしまった感あり。 力をあわせて戦闘、勝利、でいきなりなかよしこよし、では余韻が無さ過ぎる。 いきなり同等にはならないけれどいらん差別をなくしたいね、という描写があってもよかった。 最後の戦闘でキャラ整理とばかりに準メインキャラがいつのまにか死んでいたという描写で済ませるのはあまりにも気の毒。 ダンブルドア、スネイプ間の密約を知り、スネイプが純愛に殉じ使命に殉じ汚れ役を買って出てくれていたことを知るハリー。 ダンブルドアが陽の父ならスネイプは影の父だったとしり、人の思いの計り知れなさをしるあたりはスネイプ、かっこよく死なせたな、と思う。 二人の導き手の愛で無事大人になり父親になったハリーの姿を見せるというあたりも王道だが上手い。 「友情・努力・勝利」の少年冒険もののテーマはしっかり物語りを終わらせ、どうも途中から児童文学ではなく少年ジャンプを読んでいるような印象になってしまったのが惜しまれるが、これはこれでありか、と。 キャラも立っているしハコはユニークだし、話は黄金パターン、で安心して読んでいられる作品ではあったが一冊二千円近く払って読むか、といったら価格設定に疑問。 児童書は子から孫に読み次継いでほしい、というコンセプトで装丁がしっかりしてその分高価なのはわかるが読み継ぎたい、人に布教したい、と思わなければただの高価な本。 ハードカバーにタイムラグを置いて新書版を発行する、という手もあるのでは。 再読するか、といわれれば映画化した映像を見て済ませたい。 版権が取れたら名劇でアニメ化してもいいのでは、と思ったり。 |