
読書とか
一言感想
「世界たべものことわざ辞典」 西谷裕子編・東京堂出版 読んで字の通りのたべものを例にとったことわざ集。 「船頭多くして舟、山に登る」を「料理人が多いとスープが不味くなる」がごとく、たべもので表現されるのが楽しい。
「真実はワインにあり」 これは西欧諸国で共通のことわざらしい。 酒で舌のすべりがよくなる、ということ。 アニメ・攻殻の荒巻が違った意味でこのことわざを引用していたなあ、と思い出し。
「頭から水を飲め」 ロシアのことわざ。 これだけ読むとなんのこっちゃ、ですが。 この言葉に「と、ってるわけじゃなし」と続けて言って、仲人役が見合いの承諾を渋られたときに丸め込む用の言い回しらしい。 多分、「多少相手がブサメン(又はブス、ビンボ)だっていっても、頭から水を飲めといってるわけじゃなし云々」と、多少の無理を押し通す時の台詞なのだろう。 それにしても例えが豪快だ。
「鳴きながら家畜になり、泣きながら人になる」 モンゴルのことわざ。 家畜が草を食んで育つように、人は苦労を味わって人として一人前になる、ということ。 どこまでも続く青い空と草原が目に浮かぶような雄大さを感じさせる言葉。 苦労するだけじゃやだけどね。
「“オーラな人々” あなたが愛したスーパースターといま、再びふたりっきりの時を」 椎根 和著 河出書房新社 雑誌編集者としてマスコミにかかわってきた著者の過去、オーラを感じた有名人の回想録。 いわば猿回しのサルが有名人なら、さしずめ著者は猿回し、というところか。 とはいうものの、業界人として渦中の人間だった時代は多少なりとも芸をさせようとして自分が四苦八苦していた時代もあったのではなかろうか、そんな意地悪いことを感じさせるうそぶきがときおり本書の端々に転がっている。 まつわりくのが精一杯感のあるビートルズ、アブドーラ・ザ・ブッチャー、ボブ・マーリー。 上手く遊んでくれた三島由紀夫、美輪明宏、横尾忠則。 遠巻きにして時々上手く転がしていた王貞治、長嶋茂雄。 王貞治が中学生時代荒川博に左で打つようにアドバイスを受けていた、とは初耳。
とはいうものの、本書に登場するどんな“オーラな人々”よりも平凡出版(現・マガジンハウス)を上司と喧嘩して退社するも、請われて二度目の雇用、それを再度退社し、都合三度同社に就職、人間関係、金銭の悩みとは一切無縁で業界を渡り歩き、ポリシーは「わがまま」だったとうそぶく著者がなにより羨ましい。
よく現役中、夜道で刺されなかったものだ。
「文芸春秋編・御宿かわせみ 読本」 文芸春秋社
平岩弓枝のロングセラー時代小説、「御宿かわせみ」のガイドムック。 小説の背景から創作裏話、実写化で演じた俳優さんたちの対談あり、飽きさせない内容。 実は本編は一度も読んだことが無いので、とっかかりに、と思って読んだ。 本書は2001年の刊行であるが、本編はまだまだ続編が執筆されており物語の中でも時は過ぎ時代は流れ、幕末を過ぎ、なんと維新を迎えてまだ継続中らしい。 どのへんからとっかかるかは、深く考えず図書館にいって平岩弓枝コーナーの前に立って、えいっと一冊抜いてくる、でいいかもしれない、と思った。
「魔女の笑窪」 「魔女の盟約」大沢在昌著 文芸春秋
裏社会でなんでもコンサルタント、と称して占いから失せもの探しのお悩み相談、殺人まで請け負う謎のヒロイン水原を主人公しした短編集「魔女の笑窪」と、その続編の長編「魔女の盟約」 人を殺しても、レイプされそうになっても眉一つ動かさず頭の回転のい、ぶっとい女ハードボイルド。 世の中の酸いも甘いも吸い尽くしたどん底を知る強くしたたかな水原であるが、その過去が暴かれる展開につれて生きあがきながら戦うヒロインの姿が活写されるのが背筋が冷えるほど迫力があって心地よい。
続編の「魔女の盟約」でヒロインをハメて国外脱出をせざるを得なくなった敵を偶然再度追いつ追われつする展開になり、報復は何一つ生み出しはしないのだ、と思い知りながらそれでも報復に乗り出さざるを得ない因果を描ききる。 二冊あわせて読むべき。 最愛の息子を奪った憎い女の子供として、ヒロインを十四で処女だったときに淫売宿に叩き売る、いわばヒロインの不幸の元凶であるところの実の祖母はまだかくしゃくとしているらしいので、ぜひ作者には続編を書いて、その鬼婆をラスボスにして再び血みどろのバトルを繰り広げさせてほしい。
「向田邦子の手料理」 向田和子著 講談社編 生前の向田邦子が愛した手料理のレシピブック。 お姑さんからもらった本。 つい二冊購入してしまったとのことで一冊もらった。 「ただし、レシピがちょっと古いけどね」 とはお姑さんの言。 たしかに調理法は古いが、味付けは和食中心、旬の食材と手近な食材を上手く組み合わせたさっぱりした飽きないレシピ多し。 早速、ピーマンと油揚げのあえものを作ってみたがピーマンが苦手の家人も美味く食べてくれた。 盛り付けや器の写真もきれいで読んで楽しく作って楽しい一冊。
「パンドラ・アイランド」大沢在昌著 徳間書店
元・警官の主人公が小笠原の離れ小島に“保安官”として赴任する。 そこで島の財産を狙っているんだろう、と早速島の老人に言いがかりをつけられたところ、ほどなく老人は湾口で謎の滑落死を遂げる。 死因に疑問を感じた主人公は、独自の調査に乗り出すが、有形無形の妨害に遇う。 はたして、島の財産とは?そもそもそんなものは存在するのか? 主人公に好意を寄せる島営(!)の売春宿の女、チナミの思惑は?
というハードボイルド超エンタメストーリー とはいいながら推理物としての展開もきちんとしており読み手を飽きさせない。
辛い、苦しい、とあがく人をみてしまうとシンパシーを感じるが如く、自分も痛みを感じる、という元警官にしては人情家の主人公にはホロリとさせられるが、やはりこれでは警官は務まらなかっただろうな、と思ったり。 むしろ教師むきだったのでは、とか。 しかし主人公が教師では次々と襲い掛かる火の粉を振り払うこともできないし、そもそもハードボイルド超エンタメの主人公になれやしないか、と読後、妙な感慨が。
|