「KAGEROU 」齋藤 智裕 著 ポプラ社 話題のベストセラー。 友人に借りて読みました。 アマゾンさんの紹介によるとこんなかんじ ↓ 第5回ポプラ社小説大賞受賞作。
『KAGEROU』――儚く不確かなもの。 廃墟と化したデパートの屋上遊園地のフェンス。 「かげろう」のような己の人生を閉じようとする、絶望を抱えた男。 そこに突如現れた不気味に冷笑する黒服の男。 命の十字路で二人は、ある契約を交わす。 肉体と魂を分かつものとは何か? 人を人たらしめているものは何か? 深い苦悩を抱え、主人公は終末の場所へと向かう。 そこで、彼は一つの儚き「命」と出逢い、 かつて抱いたことのない愛することの切なさを知る。 水嶋ヒロの処女作、 哀切かつ峻烈な「命」の物語。 自殺して借金を残すくらいなら臓器を売買して借金清算、ついでに遺族にいくらか残して死にませんか、という誘いを受ける男なのであるが、この間の描写が良くも悪くも思い切りが悪い。 星新一のショートショートのように薄ら寒い設定をシンプルな文章でさらっと流すのでそういう小説なのか? とおもったら臓器の提供を心待ちにしている女の子がいて命を売り渡そうとしている男と命を拾おうとして(いや、買おうとしている、か?)いる少女の心が交錯する。 お、泣き盛り上げな構成なのかな? と思いきや思いがけないというより、あっけない展開で畳み掛けられ話が終わる。 あえてよたよたと会話中心で筋を運びつつ、筋をいじらない作者の力量ははたしてあるのかないのか。 話の筋を会話のやり取りでテンポよくもって行くのでなんやかんやいって読めてしまうのだが、描写が貧弱なため、作者がこの物語に託したメッセージが意図したよりも響いてこない。 しかし、貧弱な描写も語り口の未熟さも本数を書けばクリアできる課題であろう。 (それを見越してデビューさせたのだろうし) 処女作としては頑張ったのかな、と思うし、華麗な経歴で注目を受け、幸運なデビューを飾れた新人作家なのだから上手く育って良作をものしてほしい、と生暖かい感想でとどめることにした。 問題は作者が上達するのを編集者がどれだけ待っていられるか、かも
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