拾遺


[PREV] [NEXT]
...... 2007年01月15日 の日記 ......
■ 読書   [ NO. 2007011501-1 ]

「ぼくの・稲荷山戦記」 たつみや章著 講談社

 

悪友Eのお薦め本。

悪友、かなりの読み手なので、彼女の推薦本は私にとってまずハズレがない。

ので、安心して読む。

(読んで、カスに当ったなあ、という本を読んでしまうとあたしの時間をかうぇしてえぇぇ

と泣き喚きたくなります)

 

先祖代々裏山の稲荷山の巫女を務める家に生まれた中学一年生のマモルは小学生の時に母を失い、マグロの遠洋漁業にでている不在がちの父とは暮らるべくもなく、お母さんのお母さんであるところのお婆ちゃんと二人暮し。

そこにM大学学院生「守山初音」、と名乗るアブラゲ好きの奇妙な腰まで届くロングヘア(←この辺ツボ)美形の青年が(←この辺激ツボ)着流しで下駄を履いてマモルの家を訪ねにくる。

実は「守山さん」の正体は裏の稲荷山の「御使いギツネ」だった。

守山ギツネは彼が「お主(しゅ)さん」とよぶ稲荷山に祀られている神様のおわす「稲荷山」がレジャーランドに開発されようとするのを阻止せんがため人界に人の形をとってわざわざ現れたのだった。

山が切り崩されると、山の「気」が細る、山の気で神形を永らえているお主さんの命が危うくなる。

お山を、自然を、守る為、初音ギツネとマモルのささやかな戦いが、いま、始まる・・・・・

 

というお話。

 

以下読書感想。

この作者、話の転がし方が上手いんですよ。

 

途中、レジャーランド造成反対運動に、建設会社に出向くんですが、この会社の社の方針に反発しているため「捨扶持をもらって閑職についている、社長の次男、鴻沼さんに守山さんの正体を知られてしまい、このひともまた、あらたにこのささやかな戦列に加わってくれたり。

 

そして、守山ギツネとその仲間ギツネもまた人間に化けて、御山を、お主さんを守る為に発掘調査にきた、ここは貴重な古代遺跡が眠っている、と発掘作業をして、お山の、自然の大切さを人間に啓蒙しよう、と戦ってくれたり。

 

大昔から、海の神さまが、お主さんに海からの「気」を与えて「気」を充填しようとしてくれているのだが、あまりやると人界に被害が出るのであまり干渉できない、と言う台詞で山だけが自然じゃない、海も山もまるっと生態系、ということを自然に描写してしまったり。

 

守山ギツネはレジャーランド建設賛成派、反対派にお山を壊さないで、と訴えかける為その力で古代の幻影をみせる「夢紡ぎ」(要するに狐がいい意味で化かそう、としてるわけですね)の術を行う・・・

 

而して、善戦空しくこのささやかな戦争、は敗れて、「気」を使いすぎた守山ギツネは死んでしまう。

という、息もつかせぬ先の読めない展開、ほんと、上手。

 

そして・・・ラストのたたみかけとサプライズが見事。

古代遺跡はレプリカが置かれた「風土記パーク」としてその面影をなんとかとどめ、レジャーランドは「貧乏根性なニース」感がいじましい(が、そこそこ喜んでいくひともいるのでそれなりに繁盛している、という箇所がすごい。ここで閑散としていたら話が単なる『エコオタク系自然礼賛』で終わってしまうところ)

 

風土記パークに植樹された「カシ、シイ、コナラ」を見て鴻沼さんが鼻であざ笑う、という箇所にも唸らされました。

植相も知らずに見栄えのいい木を単に植えても、潮風ですぐに枯れちゃう、カシやシイがこのお山に生える為には

トベラ、イヌビワ、タブノキ、ネズミモチなんかの潮風に強い木を防風林にしないと育ちはしない、というんですね。

そして鴻沼社長と鴻沼さんとの親子確執にお主さんが言葉を手向ける

 

「あるままをあるままにみとめられぬなら、あるものをあるがままにいられる時をよぶことはかなうまいよ」

多分、この作品のテーマは自然礼賛、でも人と人との絆でもなく、この一言に集約されているんでしょう。

自然があって、人間があって、神様がいる。自然が自然を営むように、人間が家を建てるのもまた人間の営み。

人が作ったものも、自然も、一度壊れたものは、もう元の形には戻らない、が、再生する、共栄共存の努力も、またできる。

そのためにはどうすればいいのか。

こんな素朴な問いかけに鴻沼さんがマモルにいうんです

 

「目をあけて、耳を済ませていればいいのさ。で、『その日を生きる』」

 

そして、こういう言葉でこの物語は結ばれます

 

「これから」をつくっていくのは、このぼくたちなんだから

 

よどみなく、やさしい、ていねいな言葉で綴られた日本製ファンタジーの秀作!です

(ちなみに本作、出版は1992年。もののけ姫以前、であります。パクリではありません)


...... トラックバックURL ......
  クリップボードにコピー

...... 返信を書く ......
[コメントを書く]
タイトル:
お名前:
メール:
URL:
文字色:
コメント :
削除用PW:
投稿キー: