「再起」ディック・フランシス著 北野寿美枝訳 早川書房 メアリ夫人が亡くなられて、断筆宣言していたディック・フランシスが帰って来た! しかも、隻腕の元障害騎手シッド・ハーレーを連れて帰って来た! 待望の新作! 猟犬のように執念深く、猫のように好奇心に満ち、女のようにロマンチストで、正義と真実を愛する、誇り高きタフガイの私立探偵。 いいですねえ。 もし未亡人になったら、こういう男を恋人にしたいです。 ワインのチョイスも好もしい。(おとっときの赤はシャトー・ヌフ・デュ・パープ 恋人といちゃつく時の白はシャブリ) 好きな人と(架空の人でも)お酒の好みが合うってのは嬉しいもんですね。 舞台はイギリス。 障害G?の勝利馬が、ウィナーズサークルで、その、勝利騎手が、ピストルで撃たれ、双方謎の死をとげる。 そして、その馬の調教師の謎の死。 ウェストミンスターチャーチで馬の葬儀を執り行うべきだ、と市民の悲嘆の声が沸きあがる (この辺イギリスっぽくて笑える。日本で言えばオグリキャップとタケユタカが死んで、オグリの国葬が行われる みたいなものか) 英国の諜報機関から、死んだジョッキーの父親から、依頼を受け、シッド・ハーレーが調査に乗り出す。 IT化の波に乗り遅れず、メール、ネット、ワード程度は使いこなしている21世紀のシッ・ハーレーに思わず一安心。 これはとりもなおさず、御年87才のディック・フランシスが困らない程度にパソコンを使いこなしているということに他ならない。 IT化に乗り遅れてしまうと小説家ならずとも名探偵ですら、困難をきたしてしまうんですね。21世紀。 ハーレーは時々肘でシフトキーやctrlキーを押しながらタイピングしている。 必要から生じたこととはいえ、凄い。 タイピストの職を得ることはできなさそうではあるが、報告書を打つ分には十分、であろう。 容疑者の背景を洗い出しに、パブリックスクールに調査に向うハーレー。 そこで、容疑者にパブリックスクール時代、体罰を与えようとして、逆に顎を砕かれた元舎監との対話。 「犯人であれば、必ず捕まえていただきたい」 「パブリックスクールは卒業生の行状は秘匿したがる物と思っていましたが?」 「私は彼にまだ五打、貸しがある」 ここでハーレーのコメント 「復讐は冷めてこそおいしい一皿なのである」 おおう! 桑原、桑原。 が、皿まで嘗め尽くす一皿に違いない。 正義と真実を愛しつつも、たっぷりした人間味をシニックな描写で表現するフランシス、健在。 死ぬまで小説かいててください〜〜〜極東からエールを送ります! そして訳者の北野氏と共に亡くなられた翻訳家菊地光氏に冥福を祈りたい。 本書も、絶品の一皿でした! |