拾遺


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...... 2007年03月08日 の日記 ......
■ 逆境の冬   [ NO. 2007030801-1 ]

ゆきつけの八百屋の親父曰く

「この土地の冬を過ごせば、大抵の事は耐えていけるようになる。」

 

同感。

 

飽きずに毎日降っては溶け、アイスバーンをつくり、湿度の高い、骨にしみるような冷えを作りだす、雪。

 

そんな日のスーパーでの出来事。

 

両手に松葉杖をついて、買い物籠を下げ、スーパーの中、一人買い物をするご老体。

 

白いものが混じる無精髭。老人班の浮く茶渋色の顔の皮膚。

背中にしょった大型のデイパックは、見るからに安物で、身につけているのは、安っぽい、煮しめたよううな色の、やや毛羽立った暗色の防寒衣類。

そして、妙にそこだけカラフルな毛糸の帽子だけが、いかにも浮いていて

衣類、風体はそこそこ清潔だが、経済状態は御世辞にも豊かでは無いだろう、と思わせる身なりだった。

 

そのご老体が、スーパーのレジで会計を済ませ、買った食料品をレジ袋に詰めると、背中のデイパックに荷物を詰めるか、と思いきや。

 

両手に持った松葉杖に、スーパーのレジ袋を一つずつ結びつけ、何事も無いようにスーパーを出ようとしていった。

しかも、自動で無いドアの方から。

 

せめて、ドアをお開けしよう、と進行方向に先んじようとしましたが。

 

ご老体、某遠眼鏡屋の主のごとく、体の一部のように、松葉杖を使いこなす。

松葉杖の先端で、ドアの押し手を(ガラス部ではなく!)、つ、と 押し、また何事も無かったようにスーパーを出て、吹雪の中、健常者でも歩いて滑るアイスバーン路面を徒歩で、歩いていった。

 

かのご老体の家には、だれか待っているのかもしれない。

待っている人などいないのかもしれない。

 

が、なんであれ、彼自身が動かなければ、彼の日常生活が止まってしまうのだ。

不自由な体、悪天候を圧して買い物に出る理由は、ただそれだけだったのだった。

 

身障者にドアを開けようとした、なんてありきたりな親切心でいた私は

ご老体の背に「僭越にましました」と、心の中で平伏するばかりでした。

 

北国の冬は、人を逆境に強くします。

 

 

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