ゆきつけの八百屋の親父曰く 「この土地の冬を過ごせば、大抵の事は耐えていけるようになる。」 同感。 飽きずに毎日降っては溶け、アイスバーンをつくり、湿度の高い、骨にしみるような冷えを作りだす、雪。 そんな日のスーパーでの出来事。 両手に松葉杖をついて、買い物籠を下げ、スーパーの中、一人買い物をするご老体。 白いものが混じる無精髭。老人班の浮く茶渋色の顔の皮膚。 背中にしょった大型のデイパックは、見るからに安物で、身につけているのは、安っぽい、煮しめたよううな色の、やや毛羽立った暗色の防寒衣類。 そして、妙にそこだけカラフルな毛糸の帽子だけが、いかにも浮いていて 衣類、風体はそこそこ清潔だが、経済状態は御世辞にも豊かでは無いだろう、と思わせる身なりだった。 そのご老体が、スーパーのレジで会計を済ませ、買った食料品をレジ袋に詰めると、背中のデイパックに荷物を詰めるか、と思いきや。 両手に持った松葉杖に、スーパーのレジ袋を一つずつ結びつけ、何事も無いようにスーパーを出ようとしていった。 しかも、自動で無いドアの方から。 せめて、ドアをお開けしよう、と進行方向に先んじようとしましたが。 ご老体、某遠眼鏡屋の主のごとく、体の一部のように、松葉杖を使いこなす。 松葉杖の先端で、ドアの押し手を(ガラス部ではなく!)、つ、と 押し、また何事も無かったようにスーパーを出て、吹雪の中、健常者でも歩いて滑るアイスバーン路面を徒歩で、歩いていった。 かのご老体の家には、だれか待っているのかもしれない。 待っている人などいないのかもしれない。 が、なんであれ、彼自身が動かなければ、彼の日常生活が止まってしまうのだ。 不自由な体、悪天候を圧して買い物に出る理由は、ただそれだけだったのだった。 身障者にドアを開けようとした、なんてありきたりな親切心でいた私は ご老体の背に「僭越にましました」と、心の中で平伏するばかりでした。 北国の冬は、人を逆境に強くします。 -----------------------------7d72821db03ea Content-Disposition: form-data; name="image"
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