「玻璃の天」 北村薫著 文芸春秋社 読了 昭和戦前の利発なお嬢様英子ちゃん(14歳)とその、謎の美人文武両道運転手(年齢不詳)のベッキーさんのコンビでおくる 「ベッキーさんシリーズ」第二弾! 作者の清潔感と笑い顔が目に見えるような稚気を感じる文章が嬉しい。 それでいて、清潔感がフェアに振り向けられる作者の思いはいつも、立った時後を見るような佇まいのよさが感じられる。 主人公、お嬢さん・英子ちゃんと、さるパーティーで偶然言葉を交わした若い軍人・若月との会話 「〜先生方は、疑いようのない大義を語られます。例えば、大陸の人々を救うために帝国は戦っている、と教わります。お友達の中にも、《男になって、すぐにも正義の為に戦いたい》と熱く語る方は大勢いらっしゃいます。純粋だと思います。──でも、私は、《別の国が日本を救うためといって進行してきて、私や私の家族が殺されたら、それを正義と思えるだろうか》と自問してしまうのです」 対して若月氏 「戦う相手を、同じ人間と思えなくするのが戦争です。わたくしは、軍人です。軍人になるしかなかったのです。しかし、戦争のそういうところを最も憎みます。──わたくしの部下の一人一人も、戦争のための道具ではありません。生きた人間です。そして戦場で向き合う相手も、命を持つ人間なのです。そう思うことが銃を向け合う時の、わたくしにとっての、礼なのです。──せんじ詰めれば、あなたのおっしゃっていることも、それでしょう。──どこの国にいつ生まれようと、どのような考えを持とうと、人間は尊いものであるという・・・・・・」 戦士の覚悟、とはこういうものかと。 こういう覚悟、トリトンにはなかったもんなあ。 |