「奉教人の死」 新潮文庫 「地獄変・邪宗門・好色・藪の中」岩波文庫 「羅生門・杜子春」岩波少年文庫 芥川龍之介を読みたくなって手近なところを三冊。 内容にもほぼダブリなし 短編集やアンソロジーは作品をチョイスする側のセンスを読むようなもので又それも楽みのひとつ。 新潮は表題作に「奉教人の死」をもってくるだけあって後期のキリスト教シリーズが中心。 岩波文庫は「邪宗門」のような「地獄変」の後日譚としてかかれながらも風呂敷を畳めなくなって投げっぱなしジャーマン状態になった作品も収録してしまうというマニアックなチョイス。 岩波少年文庫は一見して教科書に掲載されているような表題作のほかに「トロッコ」「芋粥」「鼻」と誰でも一度は読んでいる作品から芥川メルヘンというべき「犬と笛」、この枚数でヒューマンなあたたかさをきれいに描いた「蜜柑」など、侮りがたいチョイスになっていて子供向けとは言わせないなかなかどうしてなつくりになっております。 「犬と笛」、これが本当にメルヘンなつくりでありますが語り口がとてももの柔らかいのが非常な特徴。 昔々葛城山に住む髪長彦という女のような顔立ちからそう呼ばれるわかい木こりがいた。 笛を愛し、一人寂しく暮らしていたがあるとき笛の音を愛でた葛城山の神の三兄弟神からそれぞれどんなものでも探して見つけ出す「かげ」、どんなところにも飛んでいける「とべ」、どんなものもかみ殺してしまう「かめ」という三匹の犬を貰う。 ある日山の中で侍二人に出会う。 侍たちは悪い神様にさらわれた都のお姫様姉妹を探索しているのだという。 お姫様を気の毒に思った髪長彦は三匹の犬の助けを借りて早速お姫様たちを助け出すことに成功するが、悪字絵の働く侍たちに手柄を横取りされてしまう。 髪長彦を哀れに思ったお姫様が閉じ込められていた山の女神様が髪長彦を助け出してくれるばかりか見事な衣装や武具を贈り、都に送り届け、髪長彦は見事お姫様の御父君の前で手柄を取り返し面目をほどこし、お姫様と結婚する。 ハッピーエンドのメルヘンでありますが物語の最後、髪長彦はいったいどちらのお姫様と結婚したのでしょう、といたっずらっぽく結ぶあたり、芥川の含み笑いが見えるようだ。 ところでこの「犬と笛」を読んでいたとき献辞に〜いと子さんへ献ず〜 と書かれている。 献辞されたこの「いと子」さんとは誰なんだろう。 どうもこのおはなしは「いと子さん」のためだけに作り出されたようなきがする。 そこで枕もとで芥川の顔を真面目に見つめながらお話をねだる、おしゃまで機転の利くちいさな女の子を想像してしまうのはあながちな妄想ではないだろう。 といったところで 芥川研究者の平岡 敏夫さんの著書を市の図書館に予約して調べてみることにした。 さて、いと子さん とは? 読書の愉しみですね。 |