
読書感想 「本のちょっとの話」 川本三郎著 新書館 著者が読んだ本や、かつて読んだ本、見た映画を通じて交流のあった人物、つれづれに感じたことをつづった読書エッセイ。 読む本に詰まると、こういう本で興味を惹かれた本から読みたい本を見つけてこれるので業界の事情でただぬるっと褒めてあるだけで本の欠点を指摘もけなしもしない書評なんかより、ずっと頼りになってしかも読みでがある。 夏目漱石は親友の正岡子規から聞くまで米が稲から採れるものだとは知らなかった、というのは初耳。 いかに江戸っ子とはいえ漱石ってどういう少年時代をすごしたんだ。 だが、子規から草花についてあれこれ教わるうちに、興味も知識も育ってきた、ということらしくこういう交流がなければ「虞美人草」なんて書かれなかったかもしれないんですねー 著者の映画、文学、絵画幅広い知識もさることながら、出典をきちんと引く本の丁寧なつくりも高感度が高い。 過去の文人や名文家に病弱が多いのは病床で俳句、短歌を嗜むことでグルーヴ感を培ったためだろう、という指摘に納得。 暇で金が無いとき頭を使ういい娯楽なんですよね、俳句と短歌。 ついでに推敲癖もつき、語感のセンスも養うことが出来る。 小説家結城昌治も若いころから結核で病弱であったらしく石田波郷に師事し、ハードボイルド入った推理小説作家のお作とは思えぬほどの繊細な俳句の佳品をものしている。 結城昌治の「俳句つれづれ草」収録の句集「歳月」「余色」から 「なにもかも 遠い思ひの 素足かな」 どうとも取れる句かもしれませんが、結核で入退院を繰り返していた人の句だと思うと「素足」の一言がなんと心もとなげに清冽に感じられることか。 |