
「打ちのめされるようなすごい本」 米原万里 文芸春秋 書評集。 ベストセラーでも価値が無いと判断すれば口を極めて貶し、良書であればいかにマイナーな本でも激賞する。 こういう本は手元に一冊あると大変ありがたい。 読む本を選ぶときに勘頼りにならないで済むし、ハズレに当たる可能性が減るので読書のストレスと選書のロスが減る。 いったいツマンナイ本に当たると古本に売るもの自分が蔵書であったことを示すようで口惜しく、あまりのヒド本のときには生ごみと一緒に投げ捨てていた私のようなすぐキレキレしてまう気短な人間には大変貴重な本。 著者は本来ロシア語通訳で第一人者として国際舞台で活躍したかたで、エリツィン、プーチンなど歴代ロシア首相が彼女を通訳者に指名したというだけあって、ロシア文学のみならずロシア情勢にも造詣が深く、最新歴史情勢にかなり切り込んだ感想を書いていて、それを読むだけでも面白い。 ときに本人のガン治療の記述があり、それもうだうだ湿っぽくならず、とある病院に免疫治療の詳しい説明を求め、医師に「その実験はin vitro か in vivo か」と質問し、医師にキレられもう来るな、といわれるあたり天晴れな反骨精神ですでに書評より面白い。 今でも闘病されながら書評をしておられるのかとおもったら、2006年に逝去とあとがきにあった。 井上ひさし氏が誄にも似たあとがきでその死を惜しんでいた。 こんないい書評がもう読めないこととこんないい書評家が亡くなられたことにこころから哀悼の意を捧げたい。 |