
「消えた宿泊名簿」 ホテルが語る戦争の記憶」 山田由美 新潮社 箱根の老舗ホテルのかつての支配人の孫に生まれた著者がレジスターブック(ホテルの宿泊者名簿)から掘り起こす歴史に刻まれない歴史の記憶。 日米開戦を阻止するために行われた両国が隠密裏に行なわれたという会談は本当にあったのか。 西園寺公一の「貴族の退場」ではあったように記されているが、なんと昭和十六年のレジスターブックは何故か存在しない。VIPの宿泊記録としては第一級歴史資料にも相当し県の文化財にもなっているレジスターブックである。 生半な理由で紛失はしない。また、支配人がさせないだろう。 では、戦後GHQが処分したのか? 歴史のミステリー。 著者はホテルマンが元来持っているホスピタリティ故に、レジスターブックは支配人以下、ごく限られたものの手で処分されたのだろう、と語る。 関わった人間に危害が及ばないために。 そこまでの推察は大変興味深い本であるが、惜しむらくは元来資料にするべくあるはずのレジスターブックがないので、著者もこれ以上は想像をたくましくしていない。 デタラメを書かれても困るが、仮説というものは理屈が通ってさえいれば成り立つものなのだからもっと大胆に歴史ミステリーに挑んでほしかった。 美味しいネタなのに大変惜しい本。 |