
「翼をください」 原田マハ 毎日新聞社 暁星新聞社創立135周年記念企画として主人公で記者の翔子は新聞社主筆の岡林に取材を申し込む。 而してインタビューの後、岡林主筆は翔子に冷たく言い放つ 「君、記者やめなさい」 書きたいことを書くためが故の対象の本質を捉えようとしない一方的な取材だと言われ、こうも言う。 もし、やる気があるなら“山田順平”という名の戦前の航空部所属カメラマン名前を口に出し、この人物を「追って」みろ、と言う。 要するに取材のし甲斐はあるが一筋縄ではいかないマブネタを宿題として振ってくれたわけだ。 翔子は山田順平の足跡を追いかけて、アメリカはカンザス州アッチソンにとぶ。 そこには、小さな老人ホーム「聖アンナの家」と未だアメリカのヒロイン、そして伝説の女性飛行家、エイミー・イーグルウィングの墓があった。 戦後GHQに封印され歴史の記憶から葬り去られようとした純日本製長距離飛行機「ニッポン号」とその七人の乗務員の世界一周、そして記録に無い「八人目」の乗務員、そして、ささやかなロマンスが語られ始めるときがきた… 恋バナ得意の作者さんが初めて挑む大河ロマンストーリー、ということらしく恋バナをからめながら実在の記録を追いつつ進む航空冒険ストーリーは楽しい。 戦前、戦後、アメリカとの緊張、政治的対立などとあえて暗重い話にしないのは読みやすいが、この「ニッポン」号の記録と戦争の歴史を掘り下げないのはいかにも食い足りなく、惜しいと思ったが、思いもかけぬところで魅力的なもうひとりのヒロイン、飛行家・エイミー・イーグルウィングではなく記者・翔子であってこそのいいオチがついたのは作品にとって収穫。 もっと意欲的にいろんなジャンルに挑んで欲しい作者。 |