
「武士道セブンティーン」 誉田哲也 文芸春秋 一巻目の「武士道シックスティーン」未読 どうやら実写化に即して一巻目から借りる読者や既読の一巻目にループする読者がいるのだろう。 図書館で予約待ち。 一巻を読まずに二巻から入ることが残念だが、とりあえず二巻目からとりかかる。 本来日舞をやっていたヒロイン・早苗は日舞を断念。だが立ってできる和モノくくりで(このへんのずれ方、というか百八十度真逆のようでいて本質をついいているようなこのチョイスが愉快)中一から剣道を始めた新米剣士。方やもう一人のヒロイン・香織は有段者で警官である父に持ち、幼い頃から尊敬する師・桐谷の下で剣の精進する愛読書が「五輪書」と「バカボンド」という熱血武士道娘。 なのにどうしても香織は早苗から勝つことが出来ず、勝手に早苗をライバルと思い定め、はじまる横浜の高校の弱小剣道部を舞台に繰り広げる剣道ライフ。 といったところが一巻目の要旨らしいのだ。 あらすじが無くても語り口で読んでるうちに了承してしまう。 作者、上手い。 二巻目はごとっと展開を変え、いきなり早苗は親の都合で福岡の高校に転校。 あまつさえ剣道をやめるとまでいって香織を憤らせる。 しかし、早苗はこっそり福岡県下でも、いや、日本でも有数の剣道強豪高に転校して剣道を続ける。 だが、福岡の高校の、強豪校らしい試合で勝つためにシステム化された人選や練習法に次第になじめなくなっていく早苗。 剣道はスポーツである以前に武士道。 こう言い切りつつも早苗は自分の「武士道」がわからない。 しかし、止めるといってしまった手前、早苗は香織に悩みを打ち明けられない。 一方、香織は弱小剣道部を守り立てるべく、いままではやろうともしなかった後輩の指導をしながらチームで勝とうとする、組織とヒトのありようのなかから自分の武士道を再考する。 香織と早苗、二人のヒロインの武士道への模索、そして高校二年の夏が早足で過ぎようとしていく… なんつうか、凛々しカッコイイ香織、凛々し潔い早苗、どっちもえらいカッコイイですよ。 特にこの香織の「あたし」って一人称! こんなに「あたし」という一人称がカッコイイヒロインはまずいないでしょう。 剣道のシーンも最初これって文章でいけるのかな、とたかをくくった目でわき見していた自分が恥ずかしいです。 爽快感があってスピーディーで、それでいてヒトとヒトが対峙するときのあの、見えない青白い炎がもえるような緊迫感が読んでいて心地よく飽きさせない。 作中の剣道の気合なんか、率直〜〜〜に 「メェェーヤッツタァァーッ」 とか 「カテェェヤッ、テェェヤッタァァァーッ」 なんて書かれるとうんうん、こう聴こえるよたしかに、と読みながら頷いてしまう。 ヒトの心の矜持のありようを描くのにあえてこの剣道という汗臭くて古臭そうなモチーフを使用した作者の大胆さ、明快さに、本書の装丁に紅白二本のしおりを使うというシンプルな中にも凝った装丁で本書への愛を凝縮した装丁の加藤製本さんに、惜しむことなく喝采したい。 予約した三巻目の順番が回ってくるのが愉しみです。 |