「殺しへの招待」 天藤真著 創元推理文庫 それぞれ五人の面識の無い男たちが共通の文面のタイピングされた手紙を受け取る。 それは妻が夫としての不実をなじった殺人予告状だった。 身に覚えの泣くも無い男たちは戦々恐々として策らしきものを練るが一向に自体は動かない。 まんじりとせず昼夜を経る夫たち。 そこに五人のうちの一人沖田の妻が自宅でガス管をくわえた姿で亡くなる。 先手必勝とばかりに沖田が手を下したのか? それとも殺人に見せかけた狂言自殺なのか? それとも殺意を覚える第三者が? というサスペンス・ミステリ 身に覚えのあるという状況から大混乱に陥るという夫たちに苦笑いしているところに大事件がおきる、という設定が上手い。つい読まされてしまう。 書かれた時代が昭和四十年代と微妙な古さなので内容の古さが気にならなくも無いが、時代小説・風俗小説として読んでいると思えば特に気にならない。
強いていえばミスリードばバレバレなので真犯人が意外でない。 しかしながらハコの面白さを利用しながら伝統的フーダニットで読者を引き付けて読ませる作者の力量が偉い。 作者独特の含羞のある文章はユーモア・ミステリとしてだけでなく人情話として十分読ませる内容。 |