「バナナは皮を食う―暮しの手帖 昭和の「食」ベストエッセイ集」 檀 ふみ 選 /編集 暮しの手帖書籍編集部
美食も飽食もげてもの食いも飢えの体験も入った昭和のエッセイ集。 美食のエッセイも飽食のエッセイもげてもの食いのエッセイも頭の胃袋を悦ばせてくれるが、佳編は表題にもなった植物学者牧野富太郎の果物エッセイ。 植物学者ならではのトリビアを交えた学者独特の時に目の前の聞き手を置き去りにしかねない飄々とした調子の文章が読みどころ。 選者の壇ふみさんもグルマンで聞こえたお父さんが食の薀蓄に突入する度にこういうのを聞かされたんだろうか。 そして 「お父さん、話しはもういいからはやく食べよう」 とか言っていたんだろうか、そんな風に思わせられ文を追う目尻と頬が緩む。 もうひとつあげるとすれば「原始女性は〜」で有名な平塚らいてふのまるでまな板で刻む台所のものおとが聞こえてくるような優しいエッセイ「陰陽の和合」 物資統制下に玄米がすきといって変人扱い(白米がありがたがられた時代だったのですね)されれば、で当時の最新栄養学を参考に“玄米は栄養バランスの取れたよい食品”と論ぱくするところは流石、あの有名すぎる文章を書いた女性なのだった。 かと思えば、特にモダーンな食べ物が好きというでもなく塩辛と海苔と鉄火味噌があれば十分、などというところになんとなく好感が持てる。 こういう嗜好は別にものが無い統制下だからというわけでなく倹約をひけらかしたいわけでもなく、そこに、ただ台所を預かる主婦として日々地に足をつけてつつましく当たり前に暮らしているあたりまえの一人の主婦としての姿の平塚らいてふが台所に立つ一面が見えてくるような気さえする。 好エッセイ集でした。 ちなみに鉄火味噌のレシピが知りたいかたはこちら→ ■1 ■2 食べてみたいけど作りたいかっていうと…(^_-) と思ったら通販もしてるようです。→■ 買って召し上がった方、もしいらしたら コストパフォーマンス、味、意外な召し上がり方なぞ情報お待ちしています^^ |