ごく近所に イタリアの衣料や宝飾を扱う店がある。 きわめて趣味がいい。 店名は日本語では 「階段」 または 「楽屋裏」 女主は マダムY とでも呼ぼうか。 黒髪のマダムはのうのうと自然体で享楽的だ。 不良在庫を増やしては 「これはあたしのお棺に入れる花なのよ」 と嘯く。 なるほど、と得心がいったものだった。 この店内の雑然とした、楽しい、シルクと香料の贅沢品が混ざり合った時独特の 上等の呉服屋みたいな現世離れ匂い。 こんな楽屋裏に置き忘られた舞台衣装のような羽飾りや造花 毛皮の縁取りの付いた衣装(まさしく衣装! 衣服じゃない) があったら、私とてお棺に入れられずとも ごっこ遊びに興じたくなるというものだ。 「興じては といきがふゆる かくりよは ゆめかうつつか うそかまことか」 猫狗
さてはて ここで買い物するのは 罠にかかった様なものか。 |