「カラフル」森絵都 著 理論社 死んだ「ぼく」の魂に天使プラプラが、「再挑戦」のチャンスをくれる、という。 体を借りて、下界に生きて、魂の修行をする「ホームステイ」をしろという。 もちろん「下宿先」は選べない。プラプラは、気分次第でアドヴァイスをする程度。 そして「ぼく」は服薬自殺を図った「小林真」の体に乗り移る・・・・ 奇跡の生還をした「小林真」 泣いて喜ぶ両親と、兄。 だが、だんだん「ぼく」の目に小林家の実態がみえてくる。 背の低い真のコンプレックスを苛めて喜ぶ成績優秀の意地悪兄貴。 過保護な両親。 その上、母はカルチャースクールのフラメンコ教師と不倫。 父は上司の失脚に快哉を叫ぶ体の、出世志向の塊のアブラギッシュ。 ほのかに恋焦がれていた美少女は、高価な衣装やアクセサリーほしさに無邪気に援交していた。 生きる意欲ゲージをどかーんと下げられてしまう「ぼく」 「ぼく」に明日はあるのか? そもそも「ぼく」とは誰なのか? シンプルな語り口で一気に読める文章は好感度が高い。 小林真ではなく「ぼく」が小林真として物事を処理していく過程で次第に明らかにされていく家族の事情、人間関係と言う手法で読者にステロタイプな「この悪人は実はいい人だったんだあ」という描写に読ませない。上手い。 鬱になり、学校で苛められた自分自身を無為なものに感じて自殺を図ってしまった真の心情は、悲しくも痛かった。 援交ヒロイン「ひろか」と、もう一人ダブルヒロインの一人、「ぼく」の正体に気付く唱子の描写が不自然でぎこちないような気もしたが、中学生ってぎこちないものか? 一々ひっかからないで素直に読むのが正解かも。 天使プラプラは、結局のところ、自殺未遂して、それでも生きる真に侠気のあるエールを送る 「まず、ぎゅっと目をとじろ 大きく息を吸い込め 帰ろうと思いながら一歩、足を踏み出してみな。それだけで君は君の世界に戻れる。 あばよ、小林真。 しぶとく生きろ」 帰ろうと思いながら、一歩足を踏み出す。 生きるって、けっきょくただその一歩の、積み重ねなんだよな。 「ただその一歩」が、とてつもなく、重くて辛い時があったりもするけど。 読後感爽やかな本でしでた。 |