かつて古書屋の主人、というものに憧れていた。 うず高い古本の山に埋もれて日なが一日膝に猫でも乗せながら茶でもしばいて店番兼読書する 夢でした。 今でも夢ですが。 「失われし書庫」 ジョン・ダニング著 宮脇孝雄訳 ハヤカワミステリ文庫 読了 元・警官という経歴を持つ古書マニアにして古本ハンター・古本屋の主人・クリフ・ジェーンウェイシリーズ第三弾 自分へのご褒美、としてオークションで19世紀のイギリスの冒険家リチャード・バートンの稀覯本を購入したクリフの元に同シリーズのバートンの稀覯本を持つ老女が現れる。 クリフがオークションで購入したバートンの稀覯本は、彼女の祖父の所有物で、数十年前、彼女に遺産として残されるはずだった一部であり、バートンの稀覯本コレクションはさる悪徳古書屋に二束三文で騙し取られ行方不明になった、と彼女は主張する。 バートンの稀覯本。 それ一冊でムートンをダースで購入できるほどの高価な古書。 それが全シリーズ、「どこか」にある。 余命いくばくも無い老女は、稀覯本にもはや財産的価値を見出していない。 ただ、祖父から譲り受けた名誉、として稀覯本の所有権が自分に還ることを希望し、本は自分の名で公共の図書館にでも寄贈したい、といって、老女は死ぬ。 老女は彼女の持つバートンの稀覯本をクリフに譲ることを条件に、この「失われた書庫」を見つけ出して欲しい、と依頼される・・・ 古書マニアの血と元警官の正義感が、クリフを動かす。 19世紀の冒険家リチャード・バートンのプチ薀蓄、バートンと南北戦争にまつわる歴史ミステリ、などが本筋にからみ、推理小説としてだけでない読み応えのある小説でした。 にしても古書屋の店主ってのはこうも「ハードボイルドだど」でなきゃいかんのか。 いくら死人がでたとはいえ、どんぱちーの殴り合いーのになっても 〜「だが最後の最後になって何故か私は撃たなかった。いや、理由は分っている。こんな風に人を撃ったことがないからだ」 ですから。 あと本筋から全く関係ないのだが本書に登場する、自他共に実力を認めるピュリッツアー賞作家に対するコメントにニヤリ。 「あいつはおざなりに褒められても傷つくだけなんだよ」 そうそう、とおもった。 五歳児ならいざ知らず、いい大人になっておざなりに褒められても、傷つくだけなんですよ。 これは別にピュリッツアー賞作家じゃなくも、美容院で新しい髪型にして出勤した朝、それを見た同僚の反応を感じた経験があって、人並みの程度の感性をもつ女性なら、誰もが実感を込めて頷くことだろう。 |